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【民話の季節】
一年の農作業が終わると、正月のうれしい支度がはじまります。
そして冬は、民話の季節です。語りつがれてきた昔話が目をさまします。
オオカミよりも、馬ドロボウーよりこわい「むる」とは、いったい何者なのでしよう。サルもシッポをつかまれ、引き抜かれてしまいました。
むかし、富士山のふもとにおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある雨の夜のことです。
「こんなさみしい晩は、オオカミがきたら怖いなあ」おじいさんが言うと、おばあさんは「オオカミよりも『むる』のほうがもっと怖いよう」と答えました。雨もりのほうが怖いというのです。
これを聞いていたのが、オオカミです。馬を狙って忍ぴ込んできたところでした。「さて、オレ様より心怖い『むる』とは、一体どんな奴なんだ」
そこへ、こんどは馬ドロボーが忍び込んできた。
オオカミは馬ドロポーを、てっきり「むる」だと勘違いしました。怖くなって飛び出すと、馬ドロボーは大きなオオカミを馬だと思い込んだ。「逃がすもんか」と、オオカミに飛び乗りました。
夜が明け、馬ドロボーは馬だと思っていたのがオオカミだとわかって恐ろしくなりました。「このままでは食われてしまう」溶岩の大きな穴があったので、飛び込んで隠れた。馬ドロボーは「助かった」とほっとし、オオカミもまた「むる」が穴に消えたので、「助かった」と言いほっとしました。
オオカミは動物たちを集め「おまんとう『むる』ちゅうのを知ってるか」と聞きました。みんな、ただ首をふるぱかりです。するとサルが知ったかぶりをして「知ってるど」と得意げに言いました。
「そんなら、おまん、やっつけてこう」
あとへは引けず、サルは穴の中にシッポを入れてみました。すると馬ドロボーが引っ張リました。
サルは「むる」に捕まったかと悲鳴をあげ、シッポを引くと、悲しいかな、サルのシッボはプツンと取れ、尻もちをついてしまいました。
日本のサルに長いシッポが無くなり、尻が赤くなったのは、そのときからだといわれます。
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