昔々、冨士御室浅間神社の河口にある毛石山には、いろんな獣がすんでいました。あるとき一匹の獣が、狐と狸のだましっこの力比べをしようといいだしました。これを聞いた狸は「わしや狐のようにだますのがうまくないからこんなくらべっこはしたくない」と、穴のなかに潜り込んで隠れてしまいました。
これを聞いた狐は、得意満面になって、ほかの動物だちをだまして天下をとってやろうと決め込みました。これにはほかの獣だちも弱り果てて何とか狸に頑張ってもらって狐のやつをぎゃふんといわせてやろうとあれやこれや考えました。
さて騙し比べの日がやって来ました。
月夜の晩に毛石山から里宮の森まで、空を飛ぶことで力比べをするという合戦です。狸は「おいらがさきに飛ぶよ」と元気よく「いちにほい」と、モモンガに化けて月の光りのなかを見事に森まで飛んでいきました。狐もまたモモンガに化けて、えいやっと空に飛び出したのですが、初めて化けたモモンガ、途中で失敗して池にドボンと落ちてしまいました。みんなはその様が面白くて大笑いしました。
狸がどうしてうまく化けれたかって?実は飛んだのは狸なんかじゃなくて、本物のモモンガだったのです。
このことがあってから人々はこのあたりを「ごうぞの飛び落し」と呼ぶようになり夜このあたりを通るとモモンガが顔に張り付くぞ、などと言って脅かしたので、誰も一人では通らなくなりましたとさ。
「ごうぞ」とは一丁目一番地のことだそうです。