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【河口湖大橋】
人魚は、湖のこちらと向こうに住んでいた男女の化身だといいます。
今は大橋で結ばれていますが、昔の恋人達は逢うのにも大変でした。
夜ごと湖にやってきては、恋を語り合う若い男女がいました。しかし、親に許されない仲です。二人は自由に暮らせる世界を夢見ました。
河ロ湖には、仲むつまじい男女の人魚が住んでいたといいます。悲しい恋にまつわるお話てす。
その昔、河口湖をはさんて、おみよという美しい娘と、幸右衛門(ゆきえもん)という若者が住んでいました。二人はたがいに恋仲となりましたが、幸右衛門は大きな問屋の息子、おみよは馬子衆の娘、あまりに身分がちがいすぎています。両親は、ともに、結婚をみとめてくれません。
幸右衛門とおみよは毎晩、人目をしのぴ、湖の魚見の岩で会っていました。ところが、ある晩、おみよがいくら侍てども、幸右衛門は現われません。次の晩も、また次の晩も…。幸石衛門に両親のすすめる縁談がもちあがり、家を出ることが禁じられていたのです。
それから何日かたった晩、やっとの思いて幸右衛門は家を抜け出し、魚見の岩へ出かけました。
けなげにも、おみよはその日も侍ち続けていました。幸右衛門はしっかリとおみよを抱きしめ、会えなかったことをわぴ「あと七日のうちに、きっと許しをもろうてくるぞ」と、かたく誓いました。
おみよは、胸がはりさけんばかリの思いで七日目の夜を迎えましたが、幸右衛門は現われませんでした。おみよは悲しさのあまり、湖に舟を出し、身を投げてしまったのです。このことを知った幸右衛門も、自分の気の弱さをなげきつつ、「生きていくかいがない」と、おみよのあとをおって身を投げてしまいました。
村の人たちは二人をさがし回りました。湖を舟でさがす人々の前を、仲むつまじく幸せそうに泳ぐ男女の人魚がいたということです。
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