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水槽に黒髭君がやってきてずいぶん長い月日が経ちました。
その間にただ手をこまねいていたわけではありません。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず…」(By孫子)。
まず私の場合、発生した動機がアクシデントだったので、敵を知るのに十分なデータがありませんでした。
しかし、黒髭君の大繁殖を荒業で切りぬけた(というより自然淘汰かも)後に「普通の?」黒髭君との戦いに突入していました。
そして時間をかけて観察し、理由を考えてみたのです。
1.黒髭君の餌は何だ?
ドロドロのアオミドロが消滅していくような環境でも元気に居座るところを見ていると餌は窒素系じゃないと想像できます。
じゃ、何か…。
富栄養化ってありますよね。湖に流れ込む洗剤とかの栄養分が多すぎて藻類の異常繁殖を促す。
それで特に問題になっているのが、有機リンっていうやつです(その他、アンモニア->窒素も問題ですが…)。
つまり、リンです。これは十分に藻類の餌になります。
2.リンの特性は?
黒髭の餌がリンだとすると、リンの特性を押さえる必要がありそうです。
そもそもリン(P)は分解されず残留する特性があります。
どこに残留するかといえば、魚の内部・水草の内部・砂の中…等が水槽内では考えられます。
生物内部のリンは生物が死んでも内部に蓄えられており、腐敗(嫌気バクテリア)とともに水中に放出されます。
リンの残留の良い例が人魂でしょう。死後何年もしてからでも墓の中から染み出してきて自然発火するのです。
じゃ、リンはどこからやってくるのか?…それはもちろん餌とか肥料です。残り餌はもちろん糞もそうです。そして生態内部に蓄積もされる。
そのため、枯れた葉や死骸は早めに水槽から取り除くのが正しい処置なのです。
また、砂に残留するリンもあるため、砂の掃除も欠かせません(神経質になることは無いです)。
黒髭君は管理が行き届いた水槽に良く発生すると言われます。おそらく、リンの残留特性が出るのでしょう。蓄積されたリンが砂に溜まり、砂の目詰まり等のちょっとした影響で水中にリンが溶け出すのです。
この状態は、ある程度維持された水槽の特性なのです。この「ちょっとした」が曲者なのだと思います。
黒髭君は出ない人には出ないのですから…(餌の残りとか糞は砂の隙間にパウダー状に進入していきます)。
砂の掃除はパイプ状の器具で行いますが、下手な事をすると土壌バクテリアと供に肥料まで排出する事になります。
この兼ね合いも難しい作業だと思います。経験しかないのでしょう。
3.黒髭は水流のある場所に発生する
黒髭が現れた場所を考えてみると、「不思議に水流のある(強い)場所」に多く存在しています。
もちろん、少しは錯覚があります。
通常、「水流のある場所にコケが着く」という事を人は想像していません。しかし、現に着いている姿を発見するので印象が深く残り、着きやすいと錯覚もします。
でも・でも、水流がある場所に発生しているとしか思えません。なぜでしょう?(シャワーパイプの穴とか)
そこで私は理由を想像しました。コケの胞子です。根拠が不正確ですが、おそらく正しいと思っています。
この黒髭の胞子は錨が付いている…という事でしょう。胞子の形状としてはありがちです。
その錨は、水流があれば物体に引っかかりやすいのです。もちろん、物体も凹凸が必要です。
その証拠に、微妙な水流がある石の割れ目とかにも活着しています。
その後胞子は変態して黒髭に成長していき、その過程で物体に食い込んでいく…。
重金属
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さて早速「P-CUT」なるものを試してみます。
まず確認されないのだが、おそらくアルミナが最初に溶けだし青こ除去が優先される。つまり最初の投入時、1回限りでアルミナは使い切られると思われます。
続いて重金属の効果が出てくるはずでしょう。
P-CUT投入の翌日、いつもなら水草の気泡が観察される時間なのに気泡があがりませんし、魚が水面でパクパクしています…水草がP-CUTを拒否(光合成)しているようです。
そして、私の水槽では1週間後に効果が出てきました…水草が溶ける溶ける…。
グロッソなんか色が薄くなり溶けていきます…それと前後して、ピグミーチェーン、クリプトの先端等が溶け始めました。髭コケ君はまだ元気です。
そもそも重金属は、細胞壁に取りつくことが知られています。その影響でしょうか?
また、メネデールもその成分にあるFe++が葉を溶かす事を「アクアリウム何故何の肥料」で記述していました。
グロッソが全滅するのを覚悟して、もう少し我慢して使用する事にします。
2週間後、水草は明らかに成長が止まり、葉から養分を取るような水草は徐々に個体数が減り、水槽が寂しくなっていきます。
肝心の黒髭君は、一部の場所で白くなった程度です。
このままじゃ黒髭より最初に水草が弱ってしまう…。
…で、結局中止です…いつもの水替え…。
良く考えれば重金属ほど物議を呼んでいるものは無いのですね。
下水に使用されるアルミナもそのまま川に流されるので環境問題としている人もいるし、上水道のアルミ成分がアルツハイマーと関係あるとか…。都会の上水道は人間にも危険がいっぱいです。
重金属って蓄積による影響が大きいので、扱いに慎重なんですよね。
P-CUTなるものが、どのような影響があるか特定できませんが、私の使用感としては「明らかに水草が溶ける事実がある」と結論したいと思います。
投入の前日まで「水草が気泡を上げていた」ように私の水槽は黒髭以外の部分ではすこぶる快調でした。
しかし、P-CUTの投入によって「明らかに水草が拒否」しました…その証拠に、P-CUTを使用していない60cm水槽(しかもCO2添加無しで上部濾過器)は気泡を盛んに上げています。それなのに…。
(この頁は興味があれば浄水(化)設備等のページが参考になります)
ここでちょっと…
リン酸や硝酸がコケの餌になると書いてありますが、水草にも必要なのです。
水草の肥料となるにはリン酸->リン、硝酸->窒素。と言う様にバクテリアが科学物質にまで分解して肥料となり、水草に吸収されます。
通常、これらの物質を多く与え過ぎない限りコケまで養分が回りません。水草の養分吸収のほうが優れているからです。
そして、処理しきれない物質がコケに回ります(富栄養化)。
この処理を行うバクテリアは好気バクテリアで、酸素を必要とし科学物質まで分解します。
一方、酸素が減ってくると嫌気バクテリアの登場です。これは蓄えられている科学物質を有害な成分として吐き出します(代表例はメタン)。
これが水中に溶け出すとコケの餌になります。これも富栄養化につながります。自然界では赤潮なんかが有名です。
強い水の維持は好気バクテリアの維持でもあります。
私の水槽の場合、有機肥料の投与によって大量の酸素が消費され、嫌気バクテリアの活躍によってリン酸が大量に水槽内に蔓延したと考えられます。
都会の水の場合はコケやカビの胞子が水道水に大量に含まれています。
これらは濾過できないほど小さいのです。したがって常にコケの発生の要因が存在している事になります。
したがって胞子を発芽させないことが重要なことのように感じます。水草は元気に育つようにしながら…。
水草と黒髭の生存競走で水草の味方をする…っていうのが結論のようです。
液体肥料を与える場合も「コケの増加」が怖くて控えていましたが、コケより水草の吸収力のほうが早いので、「水草が吸収できる分」を見極めて添加し水草だけを元気にする。液肥は科学物質の成分が多いので吸収されやすいのです。
そのためには水質の環境を大切にする…。
そうすると、「水槽に薬品を添加する」行為はバランスを崩しやすいので愚策だと気がつきます。
まず大切なのは「コケがあっても良いので薬品に頼らない強い水」を作ることに尽力する…。
その水の環境を作るのと同時に(出来てから)、以下の事を施せば黒髭は撲滅できると思います。
1.黒髭のついた器具は漂白するか天日干しするか食酢もしくは木酢でコケを始末する(発見するたびに)
2.葉が強そうで成長の遅い水草(ナナ等)は水槽から取り出して、薄めた食酢か木酢をはけで葉のコケ部分に塗る(すぐ効果があるような期待はしない程度に塗る。コケが赤くなったら勝ちです。その後ゆっくりと消滅していきます)。
3.CO2添加を気持ち多めにし、水草の成長を助ける。
4.同様に液肥も水草が吸収できる範囲で施す(ハイポネックスで十分)。
5.できれば温床を育てて水草に適した環境を用意してあげる。ただし、バクテリアが肥料を分解し、科学物質に変化させられるようになるまで2ヶ月程度はかかる。もちろん水草が水槽に入っていなければいけない。
6.CO2も温床に使用した(ピート)も水槽内を安定的して弱酸性に保つ効果があり、水草にとっては良い環境だがコケにとっては暮らしにくいようです。またピートの成分がコケに作用するようですが、その真偽は確認できていません。
こうやって水草の環境を整える作業がステップ2です。
そして以下の荒療治を施す…。
それは「黒髭君の着いた葉を躊躇せずカット」です。
私の場合、少しでも黒髭の着いた葉は躊躇せずカットしました。
「おいおい葉が無くなって大丈夫?」ってな具合で…。
しかし、有茎系の水草は簡単に切れませんが、根の張る水草や地下茎の水草は結構大胆にカットしました。
注意としては一気に行わない事です。あくまで「少しずつ様子を見て…でも大胆に」です。この表現が難しいですが…。
こうすると水草は(カットされる事により)大きく成長しているときより勢い良く成長しようとします。
勢い良く成長している葉にはコケがつきませんし、大量の養分吸収でコケまで養分が回りません。
この作業によって一時期水槽内が寂しくなるかもしれません。あるいは思わず絶滅する種類が出てくるかもしれません。
しかし、1度コツを覚えてしまえば徐々に黒髭君を駆逐する事が出来るはずです。6ヶ月かかるかもしれません…忍耐です。
黒髭君の減少と供にカットした水草は新芽を勢い良く噴出し、やがて水槽内に勢力を広げていくと思います。
最終的に薬品に頼らないというのが1年以上費やして得た結論になってしまいました。
長い道のりでしたが強い水を早く回復させて、水草をコケより優位な環境に持っていくというのが良いようです。
もちろん優位な環境は人的配慮が必要ですが、あくまで水草(コケ)まで減らそうとする発想ではなくて、水草を増やそうとするプラス思考なのです。
コケには欠点があります。それは彼らには胞子の時期があるという事です。その間に彼らは漂う事しか出来ません。
胞子が芽吹くときに貧栄養価になっていれば良いと思います。
また藻類は原始的な植物です。一方、一般的な水草は進化の過程で生き残る知恵をつけてきています。その知恵に期待するのです。
長い黒髭との闘いの日々、最後の黒髭がついた水草をカットした瞬間に「終わった」と肩の荷が下りました。
そして、日常の管理の中に移行します。
もはやコケというものは水槽内に出てきません。しかし、ほんの時々黒髭らしきものが水草に付着するときがあります。
そのときは「迷わずカット」です。どうやら水草水槽全体を通して「カット(トリミング)」を躊躇無く出来るようになったら上級者なのかもしれません。
陸上の園芸もベテランになるとカットを躊躇無く行ない、しかも意図した通りの効果を出しています(特に盆栽なんか)。
水草初心者の頃…カットはもったいなくて中々出来なかった時期がありました。 そしてまた…。
今回は皆さんにとって、納得のいく答えじゃないかもしれません。しかし、本人は納得しています。
また1つ何かがわかったような気がしたのは私だけなのでしょうか?
《参照:温床を育てる・肥料と言うもの・ピートモス》☆おまけ
アオコ
水槽内の水が緑色になるコケ。自分の水槽で見た事が無いが、管理を何もしないと発生する。
このコケが出るようなら水草水槽には向いていないかもしれない…。
クロレラと同じで、光合成が盛ん。直射日光が当たると大量発生を促す。
水草をあきらめて、魚だけにするなら薬品で消滅できると思われる。糸状
水槽の立ち上げ時やリセット後に良く発生する。同様に葉の表面につくドロドロ状もそう。
これは窒素系(硝酸)の養分が水中に多く存在するとでやすい。濾過能力が不足していると思われる。
硝酸バクテリアの繁殖を促す(エアーも有効)と自然消滅する。あせらずバクテリアを増やす事。点状
水槽表面(ガラス面)に時々発生。水槽の状態が良いとあまり発生しないが、出たら水替えのときに水槽表面をこすると落ちる。
それでも完全な撲滅は難しく、むしろ水替えの時期を知るバロメータにもなる。
とにかく水槽の調子が良いとなかなか出ないので水槽の状態を知る手がかりになる。
富栄養化に傾いたときにパッと発生する。排除は掃除が一番。黒髭
本文で紹介した通り。生命力が強くリン酸過多になると発生する。
水草と同程度の強さを持っているので、思いきってピンポイント除去が一番有効。