強い水

概要

定義としてアクアリウムで水質の安定した水を強い水と名づけてみます。
では私の言う強い水とは何でしょう？
まず、強い水になると水槽内はどんな様子か？
1. 水は透明である。クリア（輝いている）という表現が良いかも知れない。
2. 数週間水を替えなくても苔が付かない。
3. 水槽下部が綺麗である。
4. 魚は病気知らず、水草は元気。
以上の状態が観察されたら強い水です。
では、見えない部分（微細な）はどうでしょう？
実は綺麗に見える水槽の水でもバクテリアで満ちています。そして、それは濾過器内で増殖します。
このバクテリアはアンモニア等を栄養に増殖します。そして、このバクテリアは空気中に普通に生存しています。
ですから、水槽内にアンモニアが溜まると自然に増殖していきます。
アンモニアは、魚の排泄物等から生成されます。つまり、魚が入っていなければバクテリアが増殖せず、これは強い水と言いません。
水槽に水が溜まっているだけでは（いくら綺麗に見えても）強い水とは言いません。
「水清ければ魚住まず」です。
通常強い水は１ヶ月半かけなければできません。
このバクテリアを増殖させる役割をするのが濾過器です（生物濾過と言う）。
また、濾過器は大きなゴミを取る役割もあります（物理濾過と言う）。
物理濾過は、あまり重要ではありません。人間の見た目の為ですね。
濾過器の種類と使用法に付いては機会があったら記述します（これは直ぐに資料が見つかると思います）。

前提条件

目に見える状態の検証。
1. 何故クリアか？
  有益なバクテリアの大きさは目に見えないほど小さいです。
2. 苔が付かない？
  苔の食料は窒素やリン系です（富栄養化）。強い水はこの栄養源を極端に減らす。ただし、硝酸（苔の食料）は分解できない。
  よって定期的な水替えによって硝酸を人間が減らす必要がある。
3. 従って水槽下部もバクテリア分解で綺麗である。
4. 何故病気にならないか？
  バクテリア（有益な）で満ちている水槽は他の病原菌が増殖できる余地がない。
（重要）本ページを読むための前提条件。
1. 有機栄養バクテリア
  餌や糞等の有機物を分解するバクテリア。
  酸素を使用してアンモニアを生成する。
  増殖スピードは、分単位。
2. アンモニア酸化バクテリア
  アンモニアを分解するバクテリア。
  酸素を使用して亜硝酸を生成する。
  増殖スピードは２～３日。
3. 亜硝酸酸化バクテリア
  亜硝酸をを分解するバクテリア。
  酸素を使用して硝酸を生成する。
  増殖スピードは２～３日。

バクテリアは全て酸素を使用します。（好気性・有益）バクテリア。善玉。
酸素を使用しないバクテリアは、嫌気バクテリア。悪玉。毒を吐きます。
有益バクテリアの代表として、ニトロソモナス、ニトロバクター等があります。興味があれば専門書を…。
以上、生物濾過とは酸化分解連鎖である。

もう少し詳しく書くと（読まなくても良いです）、
餌（高分子有機物）を摂取した魚は一部を栄養にし、その後、炭素はCO2、窒素はアンモニアになる。
食べ残した餌は、様々な有機栄養バクテリアによって、炭素はCO2、窒素はアンモニアになる。リンは溶解してリン酸になる。
その他この有機栄養バクテリアの分解は、乳酸、コハク酸、酢酸等、まだまだ色々発生する。
以降、アンモニア分解、亜硝酸分解、硝酸となり、最後に人間が硝酸混じりの水を替えて薄める。

強い水のできるまで

まず、全く新しくセットしたばかりの水槽内の水は、ほとんどバクテリアの存在しない水です。また若干の塩素等も含まれており、バクテリアの繁殖できる状況にありません。
ここで通常、１週間程度水をこなし、塩素濃度を下げ、若干のバクテリアを水に含ませておきます（自然発生でも良い）。
１週間後、いよいよ魚を投入します。この時の魚はパイロットフィッシュと言い、アンモニア濃度に強い魚を投入します（鯉科の魚が一般的、ネオン等を入れるならその後の水替えを頻繁に）。
パイロットフィッシュを入れないと生物連鎖が完成せず、有機栄養バクテリアが増殖しません。バクテリアを増殖させるために魚を入れるのです（矛盾していますが）。
また、水草水槽を中心に考えている人も若干の魚（６０ｃｍ水槽なら、中型２～３匹）を入れないと連鎖のバランスが断ち切られ良くないです。
つまり、水草も様々な栄養を必要としている。
魚を投入し、餌を与え始めると有機栄養バクテリアが爆発的に増えます。この時白濁りが増大して慌てさせますが仕方ありません。
アクアリウムの先輩でも時々水を白濁りさせます。これは大抵餌の与えすぎで、有機栄養バクテリアの増大とともに生態系のバランス崩れが原因です。
さて、有機栄養バクテリアの働きとともにアンモニアが増大します。
アンモニアは魚にとって有害です。しかし、このアンモニアを分解するバクテリアの増殖スピードは遅く（２～３日）しばらくはアンモニア濃度の高い水槽になっています。この時期注意しなければ魚を他界させてしまいます。

さて、アンモニア濃度の増加とともに、アンモニアを亜硝酸（有害）に変えるバクテリアがじわじわ増殖してきます。だいたい２～３週間かかります。
この時の亜硝酸は苔の食料になります。つまり、３週間目に苔の大発生に見舞われるでしょう。
水草が少ない水槽なら、苔を取り除かず、苔に亜硝酸を吸わせて亜硝酸対策をすることがコツと言えそうです（大抵我慢できなくなりますが）。

次は、亜硝酸を分解するバクテリアの増殖です。これも２～３週間かかります。これに伴い苔も減る。
つまり、全体で1ヶ月半かかって強い水が完成します。
強い水は上記のバクテリアのテリトリーがそれぞれ飽和状態になったバランスの取れた水槽と言えます。
透明な水槽の内部では、お互いのテリトリーを共存している世界があります。
これを想像できるか？が、いつまでもクリアな水槽を維持するコツです。
さて、基本水槽セットには活性炭が付いてきます。この活性炭は最初の立ち上げ時、アンモニア吸着の役目をしています。ですから、最初の２週間は有効ですが、活性炭はその内部で飽和状態になると、今度は逆にアンモニアを吐き出します。従って活性炭は３週間で取り出しましょう。
また、濾過器はなるべくシンプルにしておく事が重要です（活性炭に頼らない。また、添加用細菌を使用しない）。
シンプルな濾過器で水槽を維持できれば環境の変化に強いです。何かに頼っていると突然バランスを崩します。
強い水の維持はシンプルな濾過から。
私の場合、
60cm上部濾過器には、下から「セラミック濾材(1200円)」「スポンジフィルター」「スポンジフィルター」としています（外部濾過器は違います）。
セラミック濾材でバクテリアの繁殖（砂の中でも繁殖している）、真ん中のスポンジフィルターもバクテリアの繁殖、一番上のスポンジフィルターは、バクテリアの繁殖と物理濾過。
そして、一番上がゴミで汚れたら洗い、真ん中のスポンジフィルターを上にして、洗ったスポンジフィルターは真ん中に入れます。
これで大切なバクテリアの流出が防げます（そのうちに、こんなに気を使わなくても維持できるようになる）。
現に私のスポンジフィルターは、数年使い回しています。しかも一番上だけ。

バクテリア相関図
強い水完成

餌の与えすぎは…（濾過器を例に）

良く「今まで順調だったのに突然白濁りして元に戻らない」と聞きますが、原因は何でしょう？
まず、純粋によく言われる濁りは、有機栄養バクテリアです。
つまり、水槽を初めて立ち上げたときに水が濁った経験はありませんか？
これは水槽内にまだアンモニア等を分解する微生物が居ないため、有機栄養バクテリアのみのテリトリーが広がり、この微生物が結果として白濁して見えます。
順調な水槽では、先のアンモニアを栄養とするバクテリア、その生成物の亜硝酸を栄養とするバクテリア、その亜硝酸を栄養に…と様々な微生物のテリトリーを形成します。
これらのバクテリアは大量の酸素を消費します。つまり、生存競争の戦いが水槽内で行われています。
その結果有機栄養バクテリアのテリトリーも減少し、白濁がやみます。
以下、上記の事をふまえて…。
原因はテリトリーの関係が崩れた事になります。
すると、先の様々なバクテリアに必要な酸素供給のバランスの崩れ、つまり、濾過器・濾材内の好気バクテリアが減少し、嫌気バクテリアの増大が考えられます。しかも水草が少ないとバランスの崩も早いです。
これは良く大量の餌を与えたときに起こります。
まず、大量の餌を与えると、有機栄養バクテリアの大量発生を促す。
すると大量の酸素が消費され、アンモニア・亜硝酸を分解するバクテリアが酸欠になり、減少する。
このまま放置すると嫌気性バクテリアが広がり、水槽内は毒物の固まりになりますが、その前に有機栄養バクテリアの増大時に白濁し、管理者が気が付き、水替えを行い大事にはいたりません。
しかし、ここで、水替えを行ってもテリトリーの関係は有機栄養バクテリアの方が多いため白濁は続きます。
つまり、有機栄養バクテリアの方がテリトリーの広がる速度が早い。
でも、初めての立ち上げでないので、通常長い期間白濁が続くことはない。
もし、１週間以上続くようなら、その間に余計なことをしたと考えられます。
たとえば好気性バクテリアを流失させる行為。
必要以上の水替え。濾過器・濾材の必要以上の洗浄。思い当たりませんか？
以下対策として、必要以上に餌を与えない。
水草が無い水槽では残り餌を取り除く。
濾過器・濾材は好気性に保つ（ただし、必要以上に洗浄しない）。

１度強い水ができると

アクアリウムに凝り出すと、２つ目、３つ目の水槽が欲しくなると思います。
この時、上記のように１から水を作らなくても、最初の水槽で強い水ができていれば、２つ目以降の水槽はもう簡単です。
つまり、１つ目の水槽の「水・砂・濾材」を２つ目に分け与えれば良いのです。
こうすることにより、長く待たなければ増殖しないバクテリアも簡単に２つ目で増殖します。
水替えを半分行ったのと同じですね。
これは参考文献に書いてある説明ですが、実は砂と濾材のバクテリアも半分になるので、単純に水替えを半分行ったとは言えないです。最悪、１つ目の水槽のバランスが崩れる可能性があります。

経験から、
水は半分与えても良いです。
砂も半分与えても良いです。
ただし、濾材は止めましょう。そして、最低２日待って魚を投入しましょう（強い種類だけ）。
２つ目は１～２週間で強い水になっていると思います。
私はもう少し無茶をしていますが、記事を書いている手前この程度に留めておきます。

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