アノマクロミス・トーマシーの繁殖記録

エンジェル フィッシュと同様、シクリッド系の魚で繁殖は容易です。
また、スネールを食べる魚としても有名。

シクリッド系は親が子育てを行うので見ていてほほえましいです。
繁殖も隔離して行えば比較的容易に個体数を増やすことができます。


繁殖準備

トーマシーは繁殖に難しい種類ではありません。
それでも市場価格で1000円程度するのは得られる個体数が少ないからなのでしょうか?わかりませんけど…。
トーマシーは雄雌混合で購入してしばらく飼い込むとペアを形成します。
ペアは平らな場所、石の上とか葉の水平になっている場所に卵を50個程度産み付け、ペアで卵を見守ります。
この様はエンジェルフィッシュと変わりません。

卵を守っているときのペアは攻撃的になっており、近くを他の魚が通ると威嚇して攻撃をかけてきます。
たまに、ペアのどちらか一方のみが卵を守っているときもあり、このときはつがいの片方にも攻撃を仕掛けるときもあります。
自然繁殖も難しくないのですが、稚魚が泳ぎ始める頃から少しづつ個体数が減少していき成魚まで生き残る確率が少ないです。
あくまでも観賞用水槽と言う過密化の環境での話ですが…。

ある程度個体数を望むならやはり隔離して育てましょう。
いつものように産み付けられた卵を茶漉しにすくいとり、水流のある場所に保管しておきます。
3日〜4日もすると卵は孵化しますので、そのまま茶漉しの中で4日ほど様子を見守ります。
次に稚魚用の餌を適度与え始めます。
<-テトラミン・ベビーフード"E"。
トーマシーの稚魚は案外早く大きくなるので直ぐに茶漉しから隔離水槽(あるいはプラケース)に移すことができます。
孵化してから2週間程度で茶漉しから引越しができます。
プラケース(隔離水槽)に移すことができればもうブラインシュリンプを与えることができます。

ブラインシュリンプエッグスは他の場所でも記述してあるので併せて読んでください。
左の写真では、ブラインシュリンプの孵化用器具を隔離水槽(60cm)にセットして水温27度〜28度でエアーを施し孵化させています。
ブラインシュリンプエッグスは孵化させるのに食塩水を使用するので分量はブラインシュリンプエッグスの説明書を読んでください。
まぁ、適当(薄すぎては困りますが)な濃度の食塩水でも孵化しますので神経質になることもないでしょう。

中央のプラケース内にトーマシーの稚魚が隔離されており、水槽内には苔取り用の魚、サッカープレコが放してあります。
ブラインシュリンプエッグスをプラケース内にスポイトで施すと稚魚は勢い良くブラインシュリンプエッグスを食べます。
3週間〜4週間もすると稚魚も体に模様が入ってきます。
この時期にブラインシュリンプエッグスを適度に与えないと成魚になる過程で成長障害が生じます。
つまり、なかなか大きくならないのです。しかしながら、生まれつき弱い固体の場合も成長障害を起こしますが…。

<-ブラインシュリンプエッグスの拡大写真。
ブラインシュリンプエッグスは、脱皮を繰り返し大きくなるので、日にちが経つと栄養価が落ちてきます。
最低でも2日程度で稚魚が食べきれる量を研究して孵化させましょう。
孵化させすぎて冷凍保存するより、少なめに孵化させて与えたほうが良いと思います。

一ヶ月程度経過すると成魚と同じ餌でも問題なく食べてくれます。
私は稚魚が現在の観賞用水槽の中で生き残れるか食べられるかのギリギリまで成長すると稚魚を観賞用水槽に移します。
私の鑑賞水槽の状態で2ヶ月程度経過した稚魚を放しました。
これは、稚魚の生存競争によって自然淘汰を促したいからです。
このやり方には賛否両論あるかもしれません。でも、卵をすべて成魚にしたとき奇形の混ざっている種が多いのです。
おそらく、ショップ等でも近親の交配を行っているせいもあるし、…だと思います。
もちろん自分の環境でも世代が進むと奇形の混ざっている率が高いのです。
そこで、鑑賞用水槽に放すのですが、3〜40匹放した場合(今回)、8匹のトーマシーが成魚になりました。
ショップに引き取ってもらうという手もあるのですが…。

自然繁殖

私は一度隔離して繁殖に成功すると個体数維持のため隔離して繁殖することは行いません。
そうすると必然的に自然繁殖となるのですが、これはこれで面白いのです。
もちろん成魚になる確率は低いのですが、魚の生態が観察できて楽しいですよ。

トーマシーは一度ペアになると定期的に卵を生みます。
しかし、私の水槽では、雄1匹、雌2匹と言う変則なので面白い現象が生じました。

ある日ペアが卵を葉の上に産み付けて仲良く卵に水流を当てて孵化させようとしています。
ところが、その次の日もう一方の雌も卵を産み、卵に水流を当てているではありませんか。
お互い水槽の端と端に離れた場所に卵が産み付けられているのです。
シクリッドはペアの気綱が強いと思っていた私の思い込みはこのとき崩れてしまいました。

観察をしていると、雌は互いに一生懸命卵に水流を当てているのですが、雄は両方の雌の間を行ったり来り、そしてたまに雌と交換して卵に水流を当てるのです。
しばらくすると他の雌のところに行き同じ事をする。
これはまるで通い旦那のようです。愛を均一に与えているのでしょうか?

しばらくすると卵は孵化をして、一時期水槽内から魚が消えます。
おそらく目立たない場所で稚魚が泳げるようになるまで見守っているのでしょう。
このとき水槽内のトーマシーは雄だけとなりました。

一週間後のある日、稚魚を連れたトーマシーの雌を発見。
稚魚は親の元から遠く離れないのか、親が稚魚から離れないのかわかりませんが、稚魚を連れて泳いでいる魚の姿には感動します。
やはりシクリッド系はこの姿を見ないといけませんね。
稚魚だけを完全隔離して繁殖させるのも良いのですが、できれば親ともども隔離して繁殖させたほうが楽しみが増すかもしれません。

さて、面白いのはここからで、2組の親子が水槽内を稚魚を引き連れて泳いでいるのです。
この親は雌で、まるで買い物に行く母親のように散歩を楽しんでいるのです。
時々すれ違ったりなんかして、「こんにちわ」とでも挨拶を交わしているのでしょうか?

面白いのは雄のほうで、どちらか片方の親子に近づくのですが、雌に体当たりされて追い返されます。
仕方がないので、もう一方にも近づくのですが、同じように体当たりされます。
結局行き場のない雄は、両方の雌と適度に距離を取ってけなげに遠くから親子を見守り、親子に近づく魚をそれとなく威嚇しています。
しかし、そんな雄の努力にも顧みず、雌は相変わらず雄を近づけてくれません。

まるで人間世界の「あること」を縮図にしたようなその光景は身につまされる思いがいたします。ハイ。
これ以上は語りませんが…、がんばれトーマシー君!


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