ゴールデン エンジェルの繁殖記録


熱帯魚の楽しみの一つに、産卵・孵化・成長があります。
ここでは、「ゴールデン エンジェル」を例に繁殖の記録を追ってみます。

特に稚魚から育てた魚が初めて産卵をすると、その喜びも倍増します。


ペアリングを成功させる

 エンジェルフィッシュの仲間は特定の相手としかペアになりません。
このペアリングを行うには、稚魚のうちから育て、自然に「おつきあい」が始まるのを待たなければなりません。
私はまず、ショップに行き、幼魚(500円玉大)を4匹購入しました。

 その幼魚を4ヶ月ほど飼い込むと、うまいぐあいに2ペアのカップルが誕生しました。ちょうど雄雌2匹で、3角関係も無かったんですね。
実を言うと私の所のペアは、最初1ペアできました。するとそのペアは残りの2匹を威嚇し始めたのです。その時はまだ、威嚇された2匹は仲良しではありませんでした。しかし、威嚇されるものだから、水槽の隅に追いやられ、そのうちに「慰め合ったのかどうかわかりませんが」仲良しになりました。なんか人間と変わりませんね。

 ペアになったかどうかは簡単に解ります。お互いが寄り添うように泳ぎ、他の魚が自分たちのテリトリーに進入すると、威嚇して追い出しにかかります。私の水槽では2ペアできたので、水槽の両隅がそれぞれテリトリーとなりました。

 そのまましばらく(2週間ぐらい)ほうっておいたら、その中の一組が産卵を行いました。産卵後も特に何もせずそのままにしておくと、夜間のうちに親が卵を食べてしまいました。エンジェルの場合、夜間に照明を落とした場合、「自分で卵を守れない」と感じ食べてしまうことがあるようです。
タイマーを使用して照明をコントロールしていたのと、もう一組のエンジェルが親魚を刺激したようです。

 その1週間後、今度はもう一組のエンジェルがアマゾンの葉を掃除し始めました。これは産卵の準備です。
そこで、違う方のエンジェルを他の水槽に移し、産卵を促すことにしました。
すると2〜3時間後、アマゾンの葉に卵が産み付けられていました。

写真は産卵直後の様子です。上のエンジェルの前方の葉に卵があるのが確認できるでしょうか?

卵を見守る。

 産卵した卵を観察すると、親魚が一生懸命、ヒレで水流を送っている様子が観察できます。
その作業は、交代で行われ、エンジェルは自分の子供を大切にする種類だと言うことが改めて認識させられます。(写真参照)
一晩経過すると、卵の中に透明な卵と、白く濁った卵が確認できます。
白く濁った卵は(たぶん無受精卵で)かびている卵なので孵化しません。

 2日目に「ちょっとかわいそうですが」卵の付いている葉を根本から切り、別の水槽に移すことにしました。
当然、別の水槽に移しても卵には水流が優しく当たるような場所にセットしてやります。
そして、親のいる水槽には、隔離しておいた別のペアを戻し、「自然に繁殖すれば良し」と言う気持ちで観賞用に戻してやりました。
卵専用の水槽には、万が一を考え吸い込み口をストッキングでカバーしてやります。そして、稚魚が吸い込み口に近づかないように水槽内に仕切をもうけました。

今回はこのような処置を取りましたが、もっと簡単には、市販の「茶こし」に卵を取り、水流のある場所にセットしておけばお手軽です。
「茶こし」に取るときに親エンジェルから攻撃を受けます(びっくりしますよ)が、「君らの子供のためだよ」と思いながら取り分けます。

孵化。

 3日目から4日目になると卵が孵化を始めます。写真はちょうど孵化する場面をとらえた写真です。
卵が孵化をし始めると急激に水質が悪くなります。今までは苔も付かずにいた水槽も、数時間で苔が付くような状態になります。
私はこの時いつも、他の魚の稚児でも苔を余り取らないようにしています。なぜなら、稚魚が苔に付いた何かを食べているような気になるからです。
実際、1週間は自分の卵の栄養で生きていますが、その後もある程度稚魚用の餌を与えなくても平気だからです。

 エンジェルの場合、孵化しても数日は自分の卵の殻にへばりついて離れようとしません。そのうちに苔が大量に発生して、1週間後には苔の中を稚魚がうごめいているような状態になります。
こうなると見てくれも悪いので、スポイトで1匹ずつ吸い上げ、用意したプラケース(稚魚用)に引っ越しをさせてやりました。

 いかがですか?特に淡水の熱帯魚の場合、繁殖は別の意味でアクアリウムの楽しさを増大させてくれます。
繁殖は今回のように意図的に行えば見られる確立が高くなります。
観賞用(魚が多い)水槽では、他の魚がいると産卵しなかったり、産卵しても捕食され自然繁殖は難しいです。
まぁグッピーやプラティーなどの直接稚魚を生む魚ならば、時々稚魚を発見できますが、卵を生む魚は難しいです。

 しかしながら、不可能ではありません。水草が多く植えられている水槽なら成功の確率も多いと思います。
ただ、コリドラスはせっかく水草の中に隠れている卵や稚魚を探し出して捕食しているような気がしてなりません。

 ちなみにコリドラスは水槽のガラス面に卵を生みます。私の水槽では、コリドラスが卵を生むと、ガラス面に付いた卵を「あっと言う間に」スマトラがやってきて捕食しています。スマトラも卵を良く食べています。
例えばウイローモスの近くで、交尾しているランプアイの後ろにずっとつきまとい、卵を生んでいる後から捕食しています。
この時ばかりは「憎たらしく」思いますが、全部が全部繁殖すると水槽がすぐ魚だらけになるので「仕方ないかな?」と思って見ています。

 やはり、繁殖は計画的に、繁殖させたい種類だけを隔離した方が良いと思います。
大抵の(価値のない)魚はショップでも引き取ってくれません。

繁殖用水槽。左:産卵用アマゾンソード。右上:稚魚用隔離プラケース。右下:産卵用アクリル毛糸。

たくさんのエンジェルの稚魚が泳いでいる。(白い点が稚魚)

これは、「ゴールデンエンジェル」の稚魚が孵化してから10日ほどたった写真です。

自然孵化

エンジェル フィッシュの仲間は、一度ペアになると1週から2週間おきに卵を生むようになります。ですから、全てを孵化させると大変な数のエンジェルになるので、一度稚魚を取り上げたエンジェルの成魚は観賞用水槽に戻します。
ただし、ペアで水槽に戻すと、相変わらず縄張りを主張するので他の魚の迷惑になるかもしれません。
また、他の魚がいても卵は産み続けます。
特に卵を守っているときには攻撃的になっているので、注意が必要です。
 生まれた卵は約3日ほど親が卵を守り続けると孵化を始めます。すると、エンジェルの親は生まれたばかりの稚魚を口に含んで他の場所に移動させ始めます。
私の水槽では、最初卵は垂直に近いアマゾンに産み付けられてありましたが、稚魚が孵化すると、水平に近いアマゾンの上に2匹の親が口に含んで移動させました。
稚魚は葉の上でもじっとしておらず、時々葉からこぼれ落ちてきます。その時親は、こぼれ落ちる稚魚を1匹づつ口で拾い、口の中に稚魚をためてまた葉の上に移動させます。この動作はペアで休むことなく続けられます。
写真は、こぼれ落ちる稚魚を口で捕まえている瞬間を写してあります。
当然、鑑賞水槽内での出来事なので他の魚が稚魚をねらって突進してきます。親は近づく魚を追い払い、稚魚が有る程度泳げるようになるまで見守り続けます。
 水槽内の他の魚の数、水草の繁殖度にもよりますが、自然の状態(このケース)で成魚まで成長するのは結構難しいです。特に自然界より魚の密生度が高いため稚魚が直ぐ発見されほとんどが捕食されてしまいます。でも、水草の状態によっては上手に隠れ、幼魚ぐらいまで無事にいられる稚魚もいます。しかしながら、稚魚の時の餌のせいか(観賞用では乾燥餌が主体)生育が悪く成魚になる確立も低いようです。
また、稚魚をプラケース等に隔離せず育てる場合の注意点は、水槽の排水口の稚魚吸引です。いくら親が稚魚を守っても夜間のうちに吸い込まれる危険があります。この時は大きめのスポンジを排水口にセットするかプラケースへの隔離が良いと思います。穴の空いたプラケースを使用する際には稚魚が穴から抜けでないよう注意してください。
稚魚は人間の見ていないときに災難にあっていると思って間違い有りません。

給餌


孵化から4〜5日後あたりから稚魚に餌を与え始めます。
エンジェルの場合は、テトラミン・ベビーフード"E"と言う商品名の餌(写真)を1日に2〜3回少しずつ与えます。
この時、稚魚は稚魚用隔離ケースにスポイトですくって入れておくと後が楽です。
水温は少し高めの27〜28度がちょうど良いようです。
先にも書きましたが、藻が繁殖していれば餌をそんなに多く与えなくても大丈夫ですし、通常の乾燥餌でも大丈夫です。
溶けた乾燥餌から養分を吸収していると思われます。
心配な方は稚魚用の餌を購入して与えてください。値段も350円ぐらいで入手できます。
ちなみにテトラミン・ベビーフード"E"は、卵生用の稚魚全般に使用できます。
この稚魚用の餌を与え続ける期間は状態によっても違いますが、2週間〜4週間ぐらいです。
プラケースで隔離して給餌していれば個体数をそんなに損なうことなく育成できます。
また、茶こしを有効に使えば更に効率的です。
小さな稚魚も外にあぶれません。


稚魚がある程度大きくなったら、餌の切り替えを行います。通常の乾燥餌でも大丈夫ですが、自然繁殖のところでも書いたように、幼魚時の発育状況が良くありません。
やはり、幼魚のうちは、栄養価の高い餌が必要でしょう。
それには、ブラインシュリンプエッグス(写真)が有効です。これは、自分で餌を孵化させて与えるタイプです。商品は通常乾燥卵の状態で購入できます。20gで1000円ぐらいです。(右は缶タイプで100gで3000円)
この乾燥卵は、ご存じの方もいると思いますが、昔、シーモンキーの名前で販売されていたものです。この卵は食塩水の中に入れてエアーを続ければ約1日で孵化します。そしてこの孵化した幼生(と言う)をスポイトで吸い込みエンジェルの稚魚に与えます。

餌を孵化させるのはそんなに難しくなく、箱の説明通りに行えばまずほとんどが孵化します。
孵化させる道具は専門の孵化道具を購入しても良いですが、500mlのペットボトルの蓋に穴をあけ、そこからエアー用のチューブを通して食塩水を入れ、乾燥卵を入れ、水槽の中にキスゴムで固定しておけばそれで事は済みます。ペットボトルの蓋には、エアー用の穴の他に空気抜きように小さな穴も同時に開けてください。そうしないとペットボトル内の空気圧が高まり、エアーが入らなくなります。

お金があったら専用のブラインシュリンプを沸かす器具を->

つまり必要な備品は、エアーポンプ(小)・チューブ・キスゴム(ペットボトルの首に回るタイプが良い)・スポイトぐらいでしょうか?
孵化した幼生は光を与えるとそこに集まるので、頃合いを見てスポイトで吸い取り稚魚に与えます。ただし、与えすぎには注意しましょう。
稚魚も100円玉大に近くなったらもう大丈夫です。
と言っても安心はできませんが。
乾燥餌と交互に与えても大丈夫のようです。ブラインシュリンプエッグスばかり与えると他の餌を受け付けなくなってくるので、ある程度交互に給餌したほうが良いようです。
また、稚魚の時はヒレ等にカビが付きやすいので、尾腐れ・水カビ予防の薬を水槽内に混ぜておくと良いかもしれません。更にある程度、コケの発生も防いでいるようにも感じられます。
また、卵のカビ易さもある程度防げると思います。「思います」と言うのは、薬を入れない場合を試してないので比較の材料がありません。ただ経験的にある程度効き目があるように感じられます。

孵化から約1ヶ月後の稚魚の様子。形もだんだんはっきりしてきます。


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