富士五湖で湖も無く、これといった観光名所も無い富士吉田市だが、富士吉田市はまぎれもなく富士五湖の中心的な街だ。その観光名所も無い富士吉田市だが、富士吉田市がうどんの街だと知っている観光客は少ない。まぁ実際のところ私自身、「吉田のうどんをおいしい」と思ったことは無い。讃岐うどんのほうがよっぽどおいしい。
いや、観光客や私のことなど、どうでも良いことなのだ。なぜなら富士吉田の住民が皆うどん好きなのだから…。
富士吉田市にはうどん屋さんが60軒以上ある。お昼ともなると富士吉田の人々はこぞって自分のお気に入りのうどん屋さんに日参する。人口密度から考えてうどん屋さんの数は異常に多い。しかし、どのうどん屋さんも地元の人でいっぱいになるから驚きである。私は富士吉田市の人間ではない。はっきりいってお昼にうどんを食べに行く習慣を持ち合わせていない。ところが、富士吉田市に仕事の関係で訪れると「お昼はうどん屋さんに行きましょう」などと、必ずそれぞれのお気に入りのうどん屋さんへ誘われる。それほど日常的な行事のようだ。
さて、そのうどんの味だが、「なんなんだ!この硬さは?」と誰しも思うほど硬い…。うどんはノド越しなんて思い込んでいるうどん食いの批判を思い切り浴びそうな硬さで、噛むという表現が適切なのである。噛めば噛むほど味の出るうどん、それが吉田のうどんの大きな特徴だ。
スープはダシにしょうゆ、それが味噌仕立てになっているのが普通で、具にキャベツが入っている。この条件が吉田うどんの定義かどうかは知らないが、そういううどんである。
お好みで入れる薬味(とっても辛い)も癖になりそうな味で、一味唐辛子をゴマや山椒等で炒ってあり、薬味も各店で微妙に違う味になっている。
ちなみに肉うどんを扱っているお店の肉は馬肉が基本であるが、豚肉もありである。
いつから富士吉田がうどんの街になったのか正確にはわからないが、戦後の貧しさに起因し、ガチャマン景気(昔、富士吉田は織物の街で景気の良い時期があった。機織器がガチャンと言えば1万円儲かったという意味。)を経ていく中で育っていったのだろう。つまり、貧しくても手に入る材料、好景気で忙しくても手軽に調理できるということだ。
麺が硬い理由はダシの入手困難さなのだろう。麺の味で勝負ということだ。歯ごたえがよく、噛めば味が出る。
最近はダシも良くなったおかげで硬さの競い合いにもなった感があるが、茹でた麺に鰹節をふりかけ、それにしょうゆをかけただけで食べる方法もある。麺の味に自信が無ければできないことだ。ただし注意しなければいけないことは、麺を硬くするために塩を余計に入れているところもある。硬さは踏んで出すものである。
塩で硬くしてあるかどうかはうどんの断面で判断する。噛み切った断面に芯があるようなうどんは避けたほうが良い。良く踏まれているうどんの断面はもっちりしている。
さて、よくある質問の中に「どの店がお勧めか?」というのがある。私の中にはいくつかあるのだが、特定のお店を指定すると他の店のファンから怒られそうなので困った問題である。
そこをあえて記述するしか無いのだが、ひとつの目安として「11:00ごろから営業を始めてうどんが無くなったらお終い」とするうどん屋さんなら無難(市監修吉田うどんマップの営業時間を注視すべし)。なぜなら、きちんと麺を打っているからだ。本物のうどん屋さんは営業時間以外で真面目にうどんを打っている。残念ながら1日で打てる麺の量はそんなに多くないのである。よって、11:00ごろから営業を始めてうどんが無くなったらお終いの店なら間違いない。
つまり、2時過ぎとかにうどんを提供しているお店は専門店ではない。製麺所の麺を使用しているということだ。ひどい所は冷凍麺を使用している店もある。
うどん一筋が必ずしも美味しいわけでは無いけれど一つの基準になる。
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