一般的に浮世絵と言われるものは江戸時代を通して当時の風俗や人気者、そして旅情風景など、いわゆる浮世を描いた多色刷りの木版画を指します。もちろん、画家が実際に筆で描いた肉筆画と呼ばれるものも浮世絵の一部です。浮世絵にきちんとした定義はないのですが、江戸時代初期(〜1750年頃)の浮世絵は肉筆画と単色刷りが主で、それが1800年頃になると多色刷りの錦絵と呼ばれる鮮やかな作品が出始めます。また、浮世絵の制作過程も、版元・絵師・彫師・摺師などの分業化がなされ、絵の構図も遠近法が多様多用されるようになってきました。さらに時代が下って幕末から明治になると西洋化や中央集権化に伴い絵の題材も質も変化していき、現在の絵画や宣材に繋がっています。
日本国内ではこのような変遷をたどった浮世絵ですが、海外に目を向けると事情が違ってきます。明治維新によって海外との貿易が盛んになると日本の焼き物や茶などが輸出されるようになりましたが、その梱包材に現在の新聞紙よろしく浮世絵を丸めて押し込みました。その梱包材である浮世絵を目の当たりにした当時の外国人は、その構図の大胆さ、その色使い、その表現力に触れ大変驚いたのです。特に現在でも名の知られた欧米の印象派を代表するゴッホやマネなどは自身の作品の中で模写もしています。 |