敬白(つつしみてもうす)。願書の意趣(いしゅ)は、
晴信(はるのぶ)が息女(そくじょ)、北条�$ュの妻、 まさに産(う)まんとするに当たりて、平安に産み、 無病にして延命せしめんことを。
すなわち、 これ従来より 歳は戊午(つちのえうま)の夏六月にて、 長(とこしな)へに船津の関鎖(かんさ)を抜くべしと。
士峯(しほう/富士のこと)大菩薩の願輪(がんりん)、 如意に満足すれば、疑い有るべからず。 急々如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)。
維時(これそのとき)弘治三暦 丁巳(ひのとみ)、 冬十一月十九日。 大膳大夫 兼信濃守 晴信(はるのぶ)。
南無(なむ) 富士浅間大菩薩(ふじあさまだいぼさつ)。
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わが娘・晴信(武田信玄)の息女であり、 北条�$ュ公の御台所(正室)である方が、 近くご出産を迎えられます。
どうか安産でありますように。 母子ともに病なく、命長く、平穏でありますように。
また、これまで続いてきた 船津の関所(船津の閉鎖)も解除され、 良き兆しが現れますように。
これらの願いは、ひとえに 士峯(富士山)大菩薩のご加護 によるものと信じます。
もし、この祈願に疑いあらば、 どうか御律令のごとく、 速やかにその御神力をお示しくださいますよう願い奉ります。
弘治三年(1557)十一月十九日(冬) 大膳大夫・信濃守 晴信(武田信玄)
南無 富士浅間大菩薩
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